高度情報化社会の実現が叫ばれるなか、日本の情報システムを取り巻く環境は悪化の一途を辿っているように思われます。
ソフトウェア開発の現場では、開発規模が増大しているにも拘わらず、開発期間の短縮と品質の確保が強く求められ、
長時間残業が常態化する過酷な労働環境となっています。
日本の企業情報システムは、諸外国に比べて内製化率が低く、パッケージ製品の利用も少ない傾向があり、
個別企業ごとの受託ソフトウェア開発が主流となっています。このようなソフトウェア開発においては、時々のユーザー要求を早く安く安全に満たすことだけに終始する結果として、保守性や拡張性に乏しいアプリケーション・ソフトウェアの無秩序な肥大化が深刻な問題となっています。
また、情報システムの高度利用に伴い、情報セキュリティやコーポレート・ガバナンスなど、情報システムに対する社会的な規制が年々強化されており、情報システム関係者への新たな負担として圧し掛かって来ています。一方、人材供給の面では、例えば、日本の大学における情報関係の学部・学科は、近年学生に最も人気の無い分野と言われています。また、個別企業ごとの受託ソフトウェア開発ビジネスにおいては、工数とコーディング量が多いほど売り上げ増になるため、質の良いソフトウェアを作成するインセンティブに乏しく、ソフトウェア技術者の技術力の低下を招いています。
私は、ベンダーのSEとしてソフトウェア開発の現場を8年ほど経験した後、電気通信会社の創業に参画し、3兆円規模の企業になるまでの21年あまり、一貫して情報システム部門の責任者として企業の情報システムと向かい合って来ました。
欧米の企業では、情報システム部門は情報システムのプロフェッショナル集団です。
情報システムのプロフェッショナルとして、自社のシステムをデザインし、多種多様なプロダクトから自社に最適なものを選定し導入します。アプリケーション・ソフトウェアについても、アーキテクチャ、データベース、プログラミングなどの各分野にプロフェッショナルが存在し、外部に開発を委託する場合も、きっちりとした仕様書を作成します。
一方、日本の企業では、情報システム部門の社員に専門家としての意識が乏しく絶対数も足りないため、情報技術に関してはベンダー任せになっています。アプリケーション・ソフトウェアについても、ユーザー要求をベンダーに伝えるのが精一杯で、ソフトウェアの作り方まで指示する力は無く、開発されたソフトウェアの良し悪しを評価する能力もありません。このような情報システム部門が相手では、ベンダーとして高度な人材を養成して質の良いソフトウェアを開発すると、無駄なコードを書かず生産性が高ければ高いほど売り上げは減ってしまいます。
日本の情報システム部門が弱体化した理由を考えると、
が大きいと考えています。情報システム総研を設立する目的は、
株式会社情報システム総研具体的には、(1)の課題に対しては、社外から情報システム部門の専門能力を補完するための、専門家集団の形成を目指します。また、(2)の課題に対しては、日本の経営者や情報システム関係者の意識改革を図るための啓蒙活動を行ないます。
私は、情報システムとは、人と人がコミュニケーションを行うための仕組みであり、太古の昔から存在するものであると考えています。近年、コンピューターやインターネットの発達により、コンピュータ・システムが情報システムであるかのように錯覚しがちですが、両者には本質的な違いがあると思います。コンピュータ・システムの構成要素には人間が入っていませんが、情報システムの主要な構成要素は人間だからです。
その違いを認識していないところに、様々な問題の発生する根本的な原因が潜んでいるように思います。
私は、本来的な情報システムの視点から、道具としてのコンピュータ・システムの作り方や使い方を見直す必要があると考えています。日本社会にとって、急速に進歩するITの成果を取り入れながら、健全な情報システムの発展を図ることは極めて重要な課題となっています。情報システム総研がその一翼を担うことを宣言し、設立趣意といたします。